知念実希人著「硝子の塔の殺人」二段構えの本格ミステリ決定版

書籍

標題の本「硝子の塔の殺人」を読みました。

作者は知念実希人氏。
医者でもあり、小説家でもある方です。
多くの著作を出されていますが、恥ずかしながら私は知念作品を読むのは初めてでした。
結論から言うと、読んで良かったと心の底から思いました。
以下に作品の内容紹介と感想を記します。

硝子の塔の殺人・登場人物

<神津島太郎>
硝子の塔の主人。医療系の特許で莫大な財産を持つ。また、ミステリマニアで作家になりたいという願望を持っている。
<碧月夜>
自称名探偵の女性。実際、警察からの依頼で難事件を解決した実績あり。極度のミステリマニアでもある。
<一条遊馬>
神津島の主治医。本作の実質主人公。作中、碧月夜の相棒として志願し、ワトソン役を務める。
<加々見剛>
県警の刑事。過去にこの地域で起きた事件を捜査したことがあるというが……
<夢読水晶>
自称霊能力者。作中、建物内に得体のしれない存在がいるなどと騒ぐ。
<九流間行進>
ベテランミステリ作家。
<左京公介>
ミステリ雑誌の編集者。
<老田真三>
硝子の塔の執事。第2の被害者。
<巴円香>
硝子の塔のメイド。第3の被害者。
<酒泉大樹>
硝子の塔の料理人。円香に想いを寄せていた。

硝子の塔の殺人・簡単なあらすじ

医療関係の特許で莫大な財産を持つ神津島太郎が、雪深い山奥に「硝子の塔」と呼ばれる全面ガラス張り円錐型の尖塔を建てます。
ここに主人公でもある神津島の主治医一条遊馬をはじめ、登場人物たちが集められます。
神津島はミステリマニアで、ミステリ小説を書く素質だけはなかったものの、ミステリに関する重大な発表をするということで、これだけのメンバーを集めたのでした。
しかし、その神津島が毒を飲まされて殺されてしまいます。
神津島に毒を飲ませたのは他でもない主人公の一条遊馬でした。
彼はとある理由から神津島を殺すしかありませんでした。
神津島殺害後、遊馬は密室を作り上げることに成功します。
これで一安心と思っていた遊馬でしたが、計算外のことが起こります。
神津島だけでなく、使用人たちが立て続けに殺人としか見えない不可解な状態で死亡したのでした。
こうなると名探偵の出番ということで、刑事の加々見らにケチをつけられながらも、碧月夜が張り切って事件解決へと捜査を開始します。
誰かに犯人役を押し付けたい遊馬は、ワトソン役として碧月夜の助手となるのですが……

私的感想

まず冒頭で一旦、主人公が犯人としてわかる展開に驚きました。
後に主人公が犯人と言い切れないことがわかるのですが、知念作品はいつもこんな感じなのでしょうか?
私はミステリに特別詳しいわけではないのですが、作中、有名なミステリ作品や作家の名前がひんぱんに登場します。
特に綾辻行人先生の館シリーズに強い影響を受けている感じでした。
それらの作品のオマージュと思われるシーンが多数ありました。
外界と連絡が取れなくなり、クローズドサークルとなるお約束や、密室殺人もいくつか登場します。
「読者への挑戦状」もあります。
それも2回も。
この作品の帯に「このジャンルでこれを超える作が現れることはないだろう」と、本格ミステリ界の旗手、島田荘司先生が絶賛しています。
まさにその通りで、この作品はいわゆる本格ミステリのオールスターとでもいうか、本格ミステリの集大成とでもいうか、あるいは本格ミステリに対する挑戦的な作品ではないかと思いました。
話は自称名探偵、碧月夜の推理によって、一旦解決します。
しかし、そこまで読んでも、まだページ数が結構残っているのに気付きます。
そこからが本番とでも言うべきか、もうひとつの推理・推理が始まるのです。
この記事のタイトルに「二段構え」と書いたのはそのためです。
確かに自称名探偵の犯人特定の段階で終わっていては、普通のミステリ小説扱いで終わるでしょう。
二段階目の推理・捜査が起こることで、この作品は本格ミステリの決定版とでも言うべき作品となります。

作者はお医者さんだけあって、頭がいいのでしょうね。
よくこんなストーリーを思いついたものだなと圧倒されました。
アイデア自体を思いつく人はいるかもしれませんが、話が破綻しないように組み立てるのが極めて困難だと思いました。
しっかり伏線が回収されており、見事に緻密な組み立てがされています。
あまり書きすぎるとネタバレになるので控えますが、ラストの怒涛の展開には驚かされます。
気になったので、読み終えたあと、もう一度、軽く読み直したのですが、確かに初めからたくさんのヒントが散りばめられていました。
そのあたり、本格ミステリのルールにしっかりと収まっています。
あえてケチを付けるなら、硝子の塔に集まったメンバーのうち、何人かは影が薄いかなとは思いましたが、気になったのはそれくらいです。
500ページ近い分厚い本なので、読み始めるのに勇気と気合がいるかもしれませんが、読んでみて損はありません。
文章も読みやすくて、スラスラと読めます。
先が気になって仕方がなくなります。
ミステリ初心者でも、ミステリマニアでも楽しめる作品ではないですかね。
ぜひ、手にとって読んでみて、驚きを楽しんでみてください。

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