「銀河英雄伝説列伝1 晴れあがる銀河」紹介と感想

書籍

田中芳樹先生の不朽の名作「銀河英雄伝説」。
アニメ化もゲーム化もされ、今も人気が衰えない名作です。

この作品のあとがきで作者は「外伝は6巻くらいになりますかね」というひとことを残されています。
そこで、ファンたちはずっと刊行を待っているわけですが、外伝は4巻が発売されて以降、発売されていません。
そんな作者に怒りを覚えたのか(?)、創元SF文庫より「銀河英雄伝説列伝」という形で書籍が発売されました。
銀河英雄伝説ファンの作家たちが書いた外伝というところでしょうか。
タイトルが「外伝」ではなく、「列伝」となっているところがポイントですね。
作者(田中芳樹先生)がもしかすると、外伝の続きを書いてくれるかもしれませんしね(笑)
今回、立ち上がった作家たちは6人。
石持浅海、太田忠司、小川一水、小前亮、高島雄哉、藤井太洋の6人です(敬称略)。
正直に白状しますが、田中芳樹先生の直弟子とでも言うべき、小前亮以外は知りませんでした……
ですが、SF界隈などに詳しい人によると、豪華メンバーだそうです。
ちなみに田中芳樹先生が監修をされています。
「どう受け止めるか迷ったが、素直に楽しむようにした」と述べられています。
なので、設定の破綻などはないと思います。
本作を読んだので、紹介と感想を記させていただきます。

収録作品

竜神滝(ドラッハ・ヴァッサーフェル)の皇帝陛下

小川一水・作。
皇帝ラインハルトとヒルダが新婚旅行に出かけている途中、公的な行事ばかりに飽きたラインハルトが、フェザーンの景勝地で釣りを始める話です。
釣り上げた魚は後に「皇帝マス」として、知られることになるという後日譚になっています。
キスリングやゼッレといったラインハルトの近侍たちも登場しています。
なお、「釣りキチ三平」のオマージュでもあるようです。

士官学校生の恋

石持浅海・作。
帝国から同盟に亡命者の子孫であるクラインシュタイガーというお菓子作りが趣味な士官学校生の男がいました。
この男が同じく亡命者の子孫であるジルという女性を口説きたくてお菓子作りに取り組みます。
それに、ヤンやラップ、ジェシカらが協力するというお話です。
若き日のキャゼルヌも登場しています。
ほのぼのとした話に見えて、実は……というひとひねりある話です。

ティエリー・ボナール最後の戦い

小前亮・作。
この列伝で唯一、艦隊戦が行われる話です。
この作の主人公ボナールの同僚として、少将時代のウランフが登場しています。
また、帝国と同盟の艦隊戦の裏にはフェザーンと地球教が絡んでいたことになっています。
そのため自治領主に就任する前のルビンスキーも登場します。
後に非業の死を遂げるウランフ提督が活躍するのはうれしかったですね。

レナーテは語る

太田忠司・作。
レナーテという帝国情報処理課勤めの女性が、当時の上司だったオーベルシュタイン大佐と共に殺人事件の犯人を探すミステリーです。
レナーテの同僚女性が殺害され、犯人と思われた男も殺害され……
オーベルシュタインが相変わらず、彼らしい期待を裏切らないキャラクターであるのが面白かったです。
個人的には、この列伝の中で一番楽しく読めました。
ただ、短編ゆえか、犯人がすぐにわかってしまうのが玉にキズでした。

星たちの舞台

高島雄哉・作。
士官学校時代のヤンがヒュパティア・ミルズという音楽学校に通う女性と演劇に挑戦する話です。
ヒュパティアは学校の寮が廃止になることに不満を持っていて、演劇を通じて存続を訴えたいという考えでした。
なぜ、ヤンが協力するのかというと、人類が地球にだけいた時代に、ヤン=ミルズ理論というものが存在しているのにちなんでいます。
それと、ラップやジェシカが絡んでいます。
ヤンが士官学校から戦史科が廃止されることに反対運動を行ったことも関係しています。
ヤンが女装をして演じるという劇はぜひ映像化してほしいと思いましたが、少し難しい話でもありました。

晴れあがる銀河

藤井太洋・作。
列伝のサブタイトルにもなっている作品です。
他の作品と大きく違うのは、ルドルフ大帝が即位した直後の時代を舞台にしていることです。
ルドルフ大帝から命令を受けた人物たちが、宇宙航路図を作るという話になっています。
最後は少しフェザーンに絡んだ話も……
この時代を舞台にしたのは面白いと思いました。

私的感想

巻頭には田中芳樹先生の言葉が、あとがきには各作家の言葉が収録されています。
全作ともさすが新進気鋭の作家たちが書いているだけに面白く読めました。
ただ、銀河英雄伝説本編を読んでいない人には、舞台設定も、人物も誰が誰だかわからないと思います。
あくまで、銀英伝ファンで、ある程度、話を覚えている人向けの作品群だと思います。
私も忘れかけている人物や設定があって、あとからネットで調べたりしました。
ですが、個人的に、こういう試みはうれしいなと思いました。
タイトルに1と書いてあるということは、続編も作られることは間違いないでしょう。
私が読んだ本はすでに4刷目だったので、売れているのだと思います。
今後の展開に期待したいですね。

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