書評:ビートたけし「キャバレー」最後のページに作者の心情が。

書籍

はじめに

ビートたけし作「キャバレー」。
最近、作家活動に力を入れているビートたけしの二作目の本になります。
(一作目は「ゴンちゃんまたね」という作品です。)
70年代から80年代くらいの新宿にあるキャバレーを主な舞台に、そこで起こる悲喜こもごもの出来事を面白く伝えてくれる作品です。
事実を元にしたフィクションということで、ビートたけしの歩んできた時代が語られます。

主人公は毒舌漫談家のあの人!

主人公はなんと綾小路きみまろ。
毒舌漫談家で知られるあの方です。
この人を主人公に据えている時点で面白い匂いがぷんぷんとしますよね。
綾小路きみまろ以外にも、ケーシー高峰や森進一など実在の歌手やら芸人が何人か出てきます。
ツービートも伝聞の形式で登場します。
一応、主人公は綾小路きみまろですが、キャバレーの支配人やシマを守るヤクザの視点でも描かれます。

簡単なあらすじ

当時はまだ無名の芸人で、キャバレーの司会を務めていた綾小路きみまろ。
営業に来たスターの司会や前説をしますが、なかなかうまくいきません。
キャバレーには用心棒代わりのヤクザがいて、常に見張り役をしているのですが、よそから別のヤクザがやってきて、抗争の場になったり、経営者が胡散臭い人物だったり……本当に当時はこんなに怖い世界だったのか思うほどです。

最後は各地で修行するため、キャバレーを去っていくきみまろですが、演歌歌手のツアー司会者として雇われるなど、成功へのステップを歩み始めます。
そして、きみまろが成功していくのに反して、キャバレーは時代とともに消えていくような形となります。
キャバレーの栄枯盛衰というのが、ひとつのテーマでもあるようです。
見ようによってはキャバレーが主人公なのかもしれません。
このあたりはもしかすると、名作映画「ニューシネマパラダイス」あたりを意識しているのかと思いました。

ラストはしんみり……

ラスト、舞台が現在となり、成功した綾小路きみまろとビートたけしが高級外車に乗り、番組の収録に向かいます。
そのとき、たけしの心の声が「俺たちの望んだ幸せってこんなものだったのかな……これで幸せだったのかな……」とつぶやきます。
この作品執筆中、作者は離婚問題で騒がれていた時期でした。
鬱なときだったのかもしれません。
意味深なラストだと思いました。
昔、清水ミチコがインタビューで「大御所タレントがギャグを言うと、面白くなくても笑わないといけない雰囲気になるのが嫌だ。そうなったら私はやめようと思っている」と話していた記憶があります。
その大御所が誰のことを指しているのかはわかりませんでしたが、ビートたけしも清水ミチコのような気分になっているのかもしれませんね。
お笑いやら映画やら、やりたいことをやり尽くしたので、何か新鮮なものに手を出さないと、モチベーションが保てないのかも。
とはいえ、作品は面白いので、芥川賞を目指してどんどん書いていただきたいですね。


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